漫画

スピリットサークルが面白い。5巻前後で濃密に楽しめる漫画

スピリットサークルという漫画をご存知でしょうか。「惑星のさみだれ」で有名な水上悟志氏の作品で、めちゃくちゃ濃密で面白い!

ひとことで紹介するならば、「中二の少年が、転校生の少女との”7つの前世”の因縁をたどる」物語。バトルあり、SFあり、伏線ありで、熱くなれる・泣ける輪廻転生のお話です。

あらすじ

中二の少年「風太」は転校生「鉱子」と出会った初日に「あんたにはあと7回死んでもらうわよ」と宣言されます。鉱子の持つ謎の道具:スピリットサークルによって自分の前世を見ることで、なぜ鉱子が風太に憎しみを抱いているのか、前世で何があったのかを確かめていきます。

ちなみにwikiはこんな感じ。

中学2年生の桶屋 風太のクラスに転入生がやってきた。霊が視える風太は、転入生・石神 鉱子にイーストという背後霊が憑いていることに気づく。風太はイーストに話しかけないようにしていたが、その日の放課後、鉱子と別れる際にイーストに話しかけられ、つい返事をしてしまう。風太にイーストが視えていることに気づいた鉱子はそれまでと態度を一変、スピリットサークルで風太を殴りつけ、過去生を視させる。

スピサの魅力とは

SFの有名な賞である「星雲賞」にもノミネートされたこの作品。どんなところが魅力なのか、個人的な感想ですがまとめました。

・1冊の密度がすごい
・構成がめちゃ練られてる
・いろんな異世界てんこ盛り

1冊の密度

全6巻と短めですが、中身はめちゃ濃密です。

特に主人公が前世を見るシーン、その人生のある時点から終わりまでを何話も使って描いています。もちろんその一つの前世が大きなドラマになっています。しかもその「前世」が6巻の中で7つ描かれ、さらに現世での主人公たちの成長・青春を描いているから、恐ろしいほどに密度がすごい。

その魅力は1巻だけ読んでもわかるでしょう。1巻目だけでも、風太と鉱子の出会いと学生生活、さらに風太の2つの前世「フォン」「ヴァン」の人生を描いています。その上、その後の話への伏線を散りばめているからすごい。

しかも2つの前世のうち、「ヴァン」の人生はかなりの超大作。かんたんに言うと、騎士である青年「ヴァン」が魔女の呪いで実家を勘当されるところから、遠方で細々と暮らしているうちに出会う「刺客」「宣教師」との生活、大切な人との出会い、そして爺さんになって死ぬ瞬間までをドラマチックに描いています。

もちろん熱い展開の中に間の抜けた笑いを入れてきたり、キャラが人間味あって親しみやすい水上節は健在!

SF・ファンタジー・戦国などなどてんこ盛り

主人公の前世、いろんな時代が登場します。戦国時代もあれば、超科学の発達した時代、霊学・霊力が世を支える時代など。異国・戦国・SF・ファンタジーなどなど、様々な世界観を楽しめるのも魅力です。

感動的な人生もあれば、戦いの多い人生もあり、どの人生もドラマチックで印象に強く残るものばかりです。

よく練られた構成が光る

水上作品に共通して言えることですが、構成がよく練られている!

特にこの作品は「核心となる前世のエピソード」に少しずつ近づいていく形で話が進み、しかもそれに関する伏線がいたるところに散りばめられています。だから読み進めた時にじわじわと謎が解決していく流れが爽快だし、その先に主人公がどのような決断をするのかが見所になります。

もちろん、完結の仕方も最高。読後の満足感、「すごい漫画を読んでしまった感」も構成の良さゆえなのでしょう。

水上悟志の描く「人生」とスピサ

水上氏の漫画の多くが、物語の最後にエピローグを入れています。

一つの大きな事件を中心とした物語が終わった後も、登場人物の人生は続く
ということを、後日談という形で描いています。惑星を砕く物語も、前世の因縁を断つ物語も、人生のひとつのエピソードにすぎない。そういった「キャラの人生」という視点で物語を描かれる作者さんだからこそ、いくつもの人生を描いたこの作品、最高に決まってるじゃないか!と感じました。

またもう1点魅力としてあげられるのが、「前世を見る」ことで、前世での主人公的キャラが死ぬ瞬間までを描いている点。基本、キャラクターの死ぬ瞬間までが描かれるのって、途中退場のキャラだけじゃないですか。でもこの作品ではすでに完結した過去の人生を見ているので、最期の瞬間までをしっかり描いている。そしてさらに、それらの人生を背負って主人公「風太」の物語は進むわけです。苦しみながら終わった人生や、大きな間違いをした人生でも、それを現世である主人公の立場から解釈・肯定している。

物語の展開や面白さでなく、「登場人物の人生」をここまで濃密に、しかも複数描き切った作品はあまりないのではと感じます。

まとめ

星雲賞・このマンガがすごい!などでも評価されているスピリットサークル。

「さみだれ」「戦国妖狐」のようなバトルものではないですが、水上作品が好きならきっと楽しめる作品だと思います。

短い巻数で濃密なマンガ体験ができるこの作品、興味がある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

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ポン助
本業:ウェブ屋さん。3度の飯と映画が好き。